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『世界推理短編傑作集5』 江戸川乱歩・編

ついにリニューアル版も最終巻です。
なんだか、少し淋しさもあります。さっそく読破。

世界推理短編傑作集5【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集5【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: 文庫


この巻は初読です。ただ、アイリッシュの「爪」だけは有名な作品なので、これだけ拾って読んでいました。それでももう30年くらい前のことですが。

1936年から1951年に発表された短編が収められています。

一番良かったのが、カーター・ディクスンの「妖魔の森の家」。
J・D・カー(カーター・ディクスン)は別格にしようと思いましたが、あまりに良くデキていたので。
もちろん再読ですが、初回は読書帳に記載がないくらい昔のこと。高校か、ヘタすると中学のころかも。
なので、H・Mが登場の直後、階段でバナナの皮に滑って転ぶシーンを忘れていました。
(こういうシーンの存在は記憶していましたが、この短編だとは覚えていなかった)
まず、この冒頭だけで、時代を超越した面白さに釘付け。
ただ、単なるコメディシーンかと言えばそうではなく、このシーンにすでに犯人が登場しているのですが、犯人から読者の意識(深読み)をそらす効果も狙っている、と思います。
(万人に対して効果があるか分かりませんが)

カーお得意の不可能犯罪モノです。
トリックというより、手がかりの提示の仕方が絶妙。さりげなく、しかし堂々と読者に見せている。
でもこれが手がかりと気づきにくい。

少ない登場人物で、キャラもはっきりしており、ときおり長編にみられるようなゴタゴタもなく、非常に完成度の高い短編。

H・Mが愛すべきキャラに仕上がっているのもイイですね。

ちなみに、原題は “The House in Goblin Wood” で「ゴブリンの森の家」。
「ゴブリン」はRPGとかによく出てきますが、おふざけが好きで意地の悪い妖精とか、醜く邪悪な小さな精霊、だそうです。
被害者が、若い小柄な悪女という設定ですから、被害者=ゴブリンなのでしょう。

さて、次に良いのが、「十五人の殺人者たち」。
ミステリーという枠を飛び越えて、小説として良くデキています。
見事なオチと、心温まる結末。小説の手本になります。

エリート医師たちが集まり、医療ミスで患者を殺してしまった(でも社会的にはミスとは公表されていない)例を告白するサークルが舞台。どことなく江戸川乱歩の「赤い部屋」にムードが似ています。

レックス・スタウトの「証拠のかわりに」は100ページ近くあって、この本の1/4を占めており、短編傑作集とはいえ、実質的には中編のボリューム。
なので、事件の展開や捜査がじっくり書かれており、他の短編とはだいぶ趣が異なります。
私はじつはスタウトの「ネロ・ウルフ・シリーズ」を読むのはこれが最初!
意外に面白かった。冒頭からつかむ。

私は名探偵のキャラとしては、このネロ・ウルフとかヘンリー・メリヴェール卿のような、いっけん傲岸不遜なんだけど、実は……みたいなタイプが好きです。

そしてアイリッシュの「爪」。
この人は短編が上手いですね。
贅肉をそぎ落とした、ムダのない逸品です。

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