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『笑う娘道成寺』 鯨 統一郎 [鯨 統一郎]

鯨 統一郎の最新作『笑う娘道成寺』を読みました。
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私は、鯨 統一郎の小説が好きですが、けっしてミステリとして楽しんでいるわけではありません。
個性豊かなキャラクターたちのドタバタ劇が半端ではない面白さ。
鯨ミステリの世界では、殺人事件は、キャラクターたちを駆動させる起爆剤にすぎません。
花火にたとえると、点火用の種火かな。鯨ミステリの殺人事件というのは。

『笑う道成寺』は、日本酒バーの常連で、めっぽう酒に強い女子大学院生、桜川東子と、山内・工藤・店のマスターの「厄年トリオ」が、バーにいながらにして謎を解く安楽椅子型ミステリのシリーズ第四弾。

殺人事件の人間関係がなぜか歌舞伎の演目とダブっていて、歌舞伎のストーリーの不自然さから事件の真相にたどり着くというパターン。

ちなみに、シリーズ第一弾『九つの殺人メルヘン』では西洋の童話、第二弾『浦島太郎の真相』では日本の昔話、第三弾『今宵、バーで謎解きを』ではギリシア神話が、殺人事件とダブっていて、それぞれ謎を解く鍵になっています。

とはいうものの、事件の謎は正直どうでもよく、事件の話が始まる前、短編の冒頭で展開される「厄年トリオ」の雑談が面白すぎます。
過去のサブカルチャーをネタに、軽快なテンポで、どーでもいい会話が展開。
読みながら、声を上げて笑ってしまいます。
事件の話になると、「ああ、もう終わっちゃった」と残念がる読者は、私だけではないでしょう。

特にマスターのキャラクター造形は素晴らしい。
アニメに向いてそうです。

昔話や童話などのネタ探しに苦労がありそうなシリーズですが、まだまだ読みたいので、続編を期待しています。
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『邪馬台国はどこですか?』 鯨 統一郎 [鯨 統一郎]

このところ多忙だったので、軽く読める小説をと思い、鯨統一郎のデビュー作『邪馬台国はどこですか?』を再読しました。
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どうも私には鯨統一郎の文章が合うようで、今回も楽しく再読しました。
『邪馬台国はどこです?』は「マグレ警部シリーズ」のようなハチャメチャなコメディではなく、いちおう「歴史ミステリ」ですのでネタ勝負の部分が大きいものの、登場人物の掛け合いなどに鯨独特のユーモアが光ってます。

この短編集には表題作のほかに、聖徳太子は『日本書紀』の作者が創造した架空の人物であるとする「聖徳太子はだれですか?」や、明治維新の黒幕は勝海舟だったとする「維新が起きたのはなぜですか?」など、歴史の「常識」を根底から覆すような異説を提示する謎の男、宮田六郎の話に、最初は「そんなばかな」と思いながらも、しまいには「もしかして……」とわずかでも思ってしまう切れ味鋭い短編が、六編収録されています。

特に面白いのは、「聖徳太子はだれですか?」でしょう。
昭和生まれにとっては、「一万円札」でおなじみだった聖徳太子。
「法隆寺を建立したのは聖徳太子」など、太子にかかる出来事について教科書を通して動かぬ歴史上の事実として教えられてますが、一方で「一度に10人の話を聞き分けた」や「処女懐胎で生まれた」などなにやら怪しいエピソードも耳にします。

「十七条の憲法」や「冠位十二階」「遣隋使」など、聖徳太子が行った善政が『日本書紀』で紹介されていますが、当時は豪族・蘇我氏が実権を握っていました。その中で聖徳太子が独創的な政治を展開できたとするには無理があるでしょう。
そもそもこの蘇我氏の存在自体も大きな謎です。馬子、蝦夷、入鹿という名前もおそらく後世に付けられた名前でしょう。馬だの鹿だの、そして蔑称である蝦夷などという名前を自ら名乗るはずがありません。

とはいうものの、『古事記』『日本書紀』よりも古い歴史書は焚書にあって残っていませんから、このへんは想像するより他にありません。
そもそも、『古事記』『日本書紀』は、編纂されたときの権力者、藤原不比等らにとって都合良く改竄された歴史でしょうから、眉に唾して読まないといけませんね。朝廷の「大本営発表」なのです。

しかしながら、古代史を研究するにはやはり『日本書紀』をよりどころにする以外なく、まったくもどかしいところです。



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『マグレと都市伝説』 鯨 統一郎 [鯨 統一郎]

“中森明菜ヒットメドレー見立て殺人事件”の謎を解く間暮警部!


9月にご紹介した『「神田川」見立て殺人』の続編です。警視庁の特命刑事、間暮警部が懐かしのヒットソングを歌いながら謎を解くシリーズの最新刊。

前作が1970年代に活躍した歌手の歌が取り上げられていたのに対して、今回は1980年代。
私もよく聞いた歌が登場してきて、思わずニヤリ。小泉今日子、近藤真彦、中森明菜など、ちょうど私が中学生のころアイドルとして全盛を迎えていた歌手たちのヒットソングの歌詞に見立てられた殺人事件が次々と発生。
それを警視庁の間暮警部がほとんどマグレで解決していきます。
結局、犯人は見立て殺人なんて試みてはいないのですが、間暮警部は強引に歌詞に結びつけて謎解きを暴走させます。
犯人も犯行方法も見抜くわけですから、典型的な“結果オーライ”。

この構図は、基本的に前作と変わりません。なので、衝撃は薄くなっています。
小説の完成度も、前作から比べると落ちています。
ですが、この他に類を見ないコメデイ小説、十分に最後まで楽しませてくれます。

それぞれの短編の最後で、登場人物のひとりである歌謡曲の素人評論家が、その歌手のベスト3をあげます。
例えば、中森明菜だと、
  「飾りじゃないのよ涙は」
  「DESIRE」
  「SAND BEIGE~砂漠へ」
とのこと。

私の中森明菜ベスト3は、
  「ミ・アモーレ」
  「北ウイング」
  「セカンドラブ」
ですね。
とくに「ミ・アモーレ」は歌謡曲史上に残る名作ではないかと思います。

♪ あなたを 探して 伸ばした 指先が~


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『「神田川」見立て殺人』 鯨 統一郎 [鯨 統一郎]

ミステリというより、コント小説?! とにかく面白い連作短編集!

難しいことを考えず、さくさく読める鯨 統一郎の連作短編集。今回は、自称、警視庁の“ペッパー警部”こと間暮警部が活躍する『「神田川」見立て殺人』を読みました。
これが面白い! 読みながら声を出して笑ってしまいました。

大川探偵事務所の面々が殺人事件の捜査を進め、たどり着いた容疑者と面会している所に、突如現れる警視庁の間暮(まぐれ)警部。
いきなり1970年代のヒットソングを歌い出し、「この殺人はこの歌詞に見立てられているのだ! 犯人はこの中にいる!」と宣言。「この中にいる」といっても、容疑者以外は探偵事務所の人間と警察官だけなので、犯人を名指ししているのと同じ。でも、その場では犯人のアリバイが崩せず、いったん引き下がる間暮警部。

“見立て殺人”という角度から大川探偵事務所が事件を再検討し、容疑者のアリバイを崩して事件解決。
間暮警部になぜ犯人がわかったのか、と問うと、間暮警部の推理はいつも支離滅裂で妄想そのもの。
つまり、間暮警部はいつもマグレで犯人を当てていたのです。
「見立て」も犯人が意図したものではなく、偶然そうなったもの。
まあ、いわゆるひとつの“バカミス”ですね。

「見立て」に使われたヒットソングは、「神田川」、「勝手にしやがれ」、「四つのお願い」、「空に太陽があるかぎり」、「UFO」、「さよならをするために」などなど。
1970年生まれの私には、70年代後半の「勝手にしやがれ」や「UFO」などはピンときました。

もっとも楽しめたのは、「「別れても好きな人」見立て殺人」。
「別れても好きな人」は、ロス・インディオスとシルビアが歌った昭和の名曲。
デュエットなので間暮警部だけでは歌えず、どうするのかと思ったら、助手の女性刑事がシルビアを担当! 二人とも歌がものすごく上手いという設定。
容疑者は歌詞のとおり、(別れた)渋谷→(傘もささずに)原宿→(思い出語って)赤坂、と店をハシゴしていたというアリバイがありました。
バカミスと油断していたところに、巧妙な死体移動トリックが仕込まれていてびっくり仰天。

もちろん「蓼食う虫も好きずき」ですが、鯨 統一郎がなぜブレイクしないのか、私の小さな不思議であります。
ただ、連作短編は面白いのだけれど、長編になると別人のように凡作になりますが。


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『浦島太郎の真相』 鯨 統一郎 [鯨 統一郎]

傑作連作短編集『九つの殺人メルヘン』の続編である『浦島太郎の真相』を読みました。

舞台は『九つの殺人メルヘン』と同じバー。登場人物も同じです。
マスターと常連客ふたりの「厄年トリオ」のバカっ話からスタートし、やがて殺人事件の話に展開。
もうひとりの常連客の桜川東子が昔話を引用して謎をとく、というパターンも同じです。

『九つの殺人メルヘン』では、この「バカっ話」が面白かったのですが、『浦島太郎の真相』では、40代半ばの男3人の中学生時代のテレビ、ラジオ、スポーツ、音楽などの話題で延々と盛り上がっておりまして、その時代のネタを知らない私は、あまり楽しむことができませんでした。
あと7、8年早く生まれていれば大うけだったことでしょう。残念。
なので、前作と比べると評価はだいぶ落ちます。
(ミステリの部分で評価しないところが鯨作品の楽しみ方です。)

昔の人は、よくラジオの深夜放送を聞いていたそうです。
私の中学時代には、すでに「オールナイトニッポン」とか聞いてる学生は少数派だったけれど、JDCの皆さんはどうでしょう?
いまは、深夜もテレビの放送がありますから、ラジオを聞く若者は少ないことでしょうね。

前作が西洋の童話をベースにした事件だったのに対し、今回のベースは日本の昔話。
TBSの「まんが日本昔話」をよく観ていたことを思い出しました。
「猿蟹合戦」とか「花咲じいさん」とか、細部を忘れていたのに、あせりました(汗)。

それにしても、最近の子供たちは、日本の昔話をどこで学ぶんでしょうね。
自分のときは、家に絵本があったような気がしますが、今時の母親は子供に「昔々あるところに……」なんて絵本を読むのでしょうか。


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『なみだ研究室へようこそ!』 鯨統一郎 [鯨 統一郎]

『邪馬台国はどこですか?』でデビューした異色のミステリ作家、鯨 統一郎の『なみだ研究室へようこそ!』を読みました。

残業して疲れた体を通勤列車のシートに沈めながら読むのにちょうどいいので、最近は鯨統一郎を読んでます。
ミステリ、とくに本格ミステリとして期待して読んではいけません。事件は軽く、そして謎も軽い。
あくまで、「鯨ワールド」とでも申しましょうか、鯨統一郎の軽~い会話、妙な文体を楽しむことが主眼であります。
この『なみだ研究室へようこそ!』は、題名からしてあまり期待は持てず、通勤時間つぶしになればいいと思って買ったのですが、これがなかなか面白い。
続編の『なみだ特捜班におまかせ!』も購入するつもりです。

私はけっして「バカミス」系のファンではありません。
ユーモア本格の旗手といわれている東川篤哉の本格長編は、途中で挫折しております。
ディクスン・カーのドタバタも面白いと思ったことはありません。
ところがなぜか、鯨には、はまってしまっております。

数冊、鯨統一郎を読んだあとで、松本清張やP・D・ジェイムズなどを読むと、その落差のおかげで、ミステリに飽きることはないだろうな、とくだらぬことを考えております。


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鯨統一郎 『ふたりのシンデレラ』 を読む [鯨 統一郎]

ミステリで“シンデレラ”といえば、そうです、セバスチアン・ジャプリゾの『シンデレラの罠』ですね。
「私は事件の探偵であり、証人であり、被害者であり、そのうえ犯人でもある。いったい私とは何者か? 1人4役を演じる空前絶後のトリック。」てなコピーが創元推理文庫版には踊ってます。
『ふたりのシンデレラ』は、『~罠』に挑戦した本格ミステリです。

いつもの鯨ワールドは展開されず、ごくごくノーマルなミステリに仕上がっています。
著者名を伏せてあったら、これが鯨の作品だとはわからないでしょう。
トリックは鯨らしく深くはないので、本格モノになれた読み手なら、事件発生の直後に真相を直感できます。
伏線が目立っていて、周囲の文章から浮きまくっており、バレバレです。

ミステリとしても凡庸、鯨作品としてのカラーがない、の点から収穫のない小説として整理できそうですが、私は「読みやすさ」に注目しました。
解説でも触れられていますが、鯨の小説は「読みやすい」です。
最近の西○京△郎のように、単に文章が荒いのでサクサク読めるというものではなく、きちんと整理して短い文章で伝達する必要のあるデータだけを書くというかんじの文体です。

鯨統一郎は多作家で、作品数は豊富ですが、読みたいと思うものはだいたい読んでしまったので、新刊に期待しております。


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鯨統一郎の魔力? [鯨 統一郎]

たまたま古本屋で目について買ってきた鯨統一郎の『ミステリアス学園』。
ちょっと冒頭だけを読んで見ると、なかなか面白い。別の長編ミステリを読破中だったのですが、連作短編集なので最初の1話だけ読もうと手に取ったら、勢いで終わりまで読んでしまいました。

舞台はある大学のミステリ研究会。
主人公はその新規会員ですが、ミステリについては『砂の器』しか読んだことがないという素人。
彼の視点で、ミステリ・マニアの会員たちが描かれます。
社会派好きの四年生。
大藪春彦好きの三年生。(モデルガンをいつも携帯)
ハードボイルド好きの二年生。
本格好きの一年生。(一番好きな作家は、島田荘司!)

もちろん事件が発生しますが、ミステリ的には弱いです。
それより、登場人物たちが繰り広げるミステリ論争が面白い。
作中でも最大のテーマは「本格とは何か」。
どこか、JDCの議論とリンクしてます。

私は鯨統一郎の作品を他にも、
『邪馬台国はどこですか?』『九つの殺人メルヘン』『新・世界の七不思議』『すべての美人は名探偵である』を読んでいます。いずれも妙に波長が合う作品ばかりです。
分厚い重量級のミステリがもてはやされる現在ですが、こんな軽量級ミステリもなかなかなものです。


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