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「殺人鬼」 横溝正史 [横溝正史]

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

さて、毎年元日に横溝正史の小説を読む企画。今年も挙行いたしました。
今年は、「殺人鬼」です。

殺人鬼 (角川文庫)

殺人鬼 (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2006/11/25
  • メディア: 文庫


文庫本にして80ページ強のやや長めの短編。
初出は、昭和22年12月、雑誌「りべらる」に掲載。
「りべらる」というのは、「カストリ雑誌のなかで、もっとも読者数が多かった」(『金田一耕助 完全捜査読本』宝島社)そうです。

長短編あわせて77作ある金田一耕助もののうち、ごく初期、5番目の作品。『夜歩く』や『八つ墓村』より前です。
初期の短編には、「蝙蝠と蛞蝓」などのように、形式にとらわれない自由なストーリー展開のものが目立ち、なかなか面白い。
この「殺人鬼」も、探偵小説作家・八代竜介の一人称視点で話が進みます。東京が舞台なのに、等々力警部は出番なし。

大昔に読んでいたのですが、すっかり忘れていたところ、昨年、NHK-BSで30分枠でドラマ化したことから読み返してみました。

事件の真相はなかなか複雑。
普通に書くと不自然なところも、キャラクターの背景や性格からそのような行動をとる必然性を持たせるところなど、さすがは横溝正史。小説家としての技量の高さを改めて実感。

短編らしく、最後にオチを決めているのもいい。

さて、小説の内容と関係ありませんが、今回、旧角川文庫版で読みました。
まあ、なんと活字の小さいこと。
終始、眼鏡を外してピントが合う距離に本を掲げて読む始末(ド近眼なので、眼から紙まで10センチもない)。
こうなると、電子書籍のありがたみが分かります。

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『女王蜂』 横溝正史 [横溝正史]

今回で4回目の再読。約10年ぶりです。

金田一耕助ファイル9 女王蜂<金田一耕助ファイル> (角川文庫)

金田一耕助ファイル9 女王蜂<金田一耕助ファイル> (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2001/12/14
  • メディア: Kindle版


(『女王蜂』といえば、やはりこの表紙。)

1951年から1952年にかけて、雑誌『キング』に連載。『犬神家の一族』に引き続いての連載。
記憶していたよりも、サスペンス寄りの作風でした。
ヒロイン・大道寺智子の視点によるシーンが多く、主人公の心理を追いながらストーリーに引き込まれていきます。
とはいっても、『八つ墓村』や『三つ首塔』のように主人公に視点を固定した書き方ではないため、やや中途半端な感じがしました。
作品内でもでてくる比喩ですが、まるで“蝙蝠”のようです。
本格のような、サスペンスのような。

もっと大道寺智子の視点に特化して、スリルを強調しても面白かったかもしれません。
九十九龍馬という行者(いまでいう新興宗教の教祖)に密室内で襲われそうになるシーンがありますが、このようなピンチを複数配置すると、パンチのきいたストーリーになったでしょう。
(九十九の「お父っつぁま、お母っつぁま」という話し方が恐ろしく印象深い)

金田一耕助も、今回は本格ミステリの名探偵というより、行動派の私立探偵という印象です。
歌舞伎座で大導寺智子と多門連太郎の話を盗み聞きしたり、犯人から夜道で襲われ命を落としそうになったりします。
推理のほうも、第一の事件である遊佐三郎殺しでは、関係者のアリバイを緻密に調べはしますが、三宅嘉文殺しや九十九龍馬殺しでは、推理を働かせた形跡がほとんどありません。
最終的に“蝙蝠”の謎が解け、19年前の殺人事件の真犯人がわかったところで、芋づる式に現在の連続殺人の犯人も判明したという結果でした。

本格の色あいが薄いと申しましたが、その中で19年前の事件である月琴島での密室殺人のトリックはなかなか面白いと思いました。

美女に群がる男どもが次々に殺害されていく、という物語として、『女王蜂』は、『犬神家の一族』、『三つ首塔』と似ています。
そして、『犬神家の一族』→『女王蜂』→『三つ首塔』の順に、本格度が薄れ、サスペンスの度合いが濃くなっていきます。
ちなみに『三つ首塔』は私のたいへん愛好する作品で、上に書きました『女王蜂』のサスペンス強調版としても高い完成度を保っております。
多門連太郎にあたる人物として、高頭俊作が配置され、犯人像も動機も相似形といえるでしょう。
『三つ首塔』も再読したくなりました。

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「恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)」 横溝正史 [横溝正史]

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

毎年恒例のイベント「元日に横溝正史を読む」。
今年は「恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)」 を読みました。

恐ろしき四月馬鹿 角川文庫 緑 304-46

恐ろしき四月馬鹿 角川文庫 緑 304-46

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2003/02/14
  • メディア: Kindle版


ご存じのとおり、横溝正史のデビュー作。
大正10年(1921)、「新青年」に発表。ショートショートに近い分量ながら、どんでん返しが用意してあるヒネリの利いた作品。

これだけだとあっという間に読めてしまったので、角川文庫版『恐ろしき四月馬鹿』に収録されている、
「深紅の秘密」と「画室の犯罪」も読みました。

「深紅の秘密」(1921年「新青年増刊」)は、ドイツの諜報機関もからんだスケールの大きな作品。
解説の中島河太郎によれば、あの有名な「××トリック」をわが国で最初に使用した例とのこと。

「画室の犯罪」(1925年「新青年」)は、この短編集に収められている短編として長めのもの。分量があるので、捜査の過程なども丁寧に描けている。名探偵・西田健二の最初の事件という設定で、ちゃんと本格ミステリーのフォーマットが整っています。
しかも、最後にどんでん返しを用意してある。
のちに花開く才能の芽が読み取れる作品。

いずれの短編もそうですが、文章に古くささがない。さすがです。

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「カルメン殺人事件」 横溝正史 [横溝正史]

開けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

さて、私がライフワークにしている“元日に横溝正史を読む”の企画。
今年は、「カルメン殺人事件」を読みました。
20150101.jpg
春陽文庫版(『蝶々殺人事件』収録)では「カルメン殺人事件」ですが、角川文庫版(『幻の女』収録)では、「カルメンの死」となっています。

戦後ミステリの名作『蝶々殺人事件』の次に書かれた由利先生シリーズの短編です。結局、これが由利先生の最後の舞台となりました。発表は「講談倶楽部」昭和25年1~3月号。短編ですが、連載です。

『蝶々~』は、由利先生の奥さんのこんな台詞で終わっています。

「(略)でも、安心してちょうだい。今度は決して、カルメン殺人事件なんて起こりゃしないから。だって、うちのひとがついていてくれるんですものねえ。ホホホホホ」

『蝶々~』では、蝶々夫人を演じるオペラ歌手が被害者となります。
やはりオペラ歌手である由利先生夫人が、次にカルメンを演じようかという話になって、どこぞの誰かに殺されるんじゃないかっていう心配は、名探偵たる夫がいるから大丈夫と笑い飛ばすシーンであります。

しかしながら、起こってしまったのが「カルメン殺人事件」。
でも、殺されたのは、由利夫人ではない、別の歌手なので、由利麟太郎ファンはご安心を。

「カルメン殺人事件」は、『蝶々~』と構造がよく似ています。
被害者のオペラ歌手は、女王然としていて、複数の男と関係をもっている。そして、パトロン付き。
オペラ歌手の遺体が箱に入っているのも同じ。『蝶々~』はコントラバスのケースですが。

トリックも似ています。ネタバレになるので書きませんが、気になる方は再読を。

デキは悪くない、といったところ。正史としては平均的な短編かな。
手がかりが出そろったところで、犯人逮捕劇となって幕、というかんじ。推理ゲームではないです。
『蝶々~』を読み終わったあとの、ボーナストラックというのがちょうどいい立ち位置。
なので、春陽文庫の編集は、素晴らしい!の一言。

興味深いシーンがありました。
犯行現場に侵入して重要なアイテムを一人で探している人物が、そこに至った経緯を延々と話します。ぶつぶつと独り言をはじめる。
捜し物をするとき、部屋に入ったときの動作をすべて思い出して実演するとモノを置いた場所を思い出す、というのがありますが、まさにそれをする。で、ご丁寧に記憶を口に出してもくれる。
その人物は一人きりのつもりですが、実は由利先生と等々力警部が隠れている。
つまり、読者にも伝わるわけです。

奇妙なシーンでしたが、舞台演出っぽくて、オペラ劇の舞台裏のような雰囲気のこの作品には、不思議と違和感がありませんでした。
さすが、手練れのストーリーテラー、横溝正史。




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「探偵小説」 横溝正史 [横溝正史]

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

さて、毎年続けている“元日に横溝正史を読む”という企画。
今年は、「探偵小説」を選びました。
(なぜそんなに横溝正史に思い入れがあるのかは、このブログで過去に書いているので改めて説明しません。あしからず)
20140102.jpg
角川文庫で読んだ方が薄くて楽、だと思ったのですが、「探偵小説」が収録されている巻を探しあてることができず、厚くて重い創元推理文庫の日本探偵小説全集第9巻で読みました。

金田一耕助や由利麟太郎の登場しないノンシリーズ。
有名な作品ですので、筋書きを説明する必要もないと思います。
横溝の本格短編では、「百日紅の下にて」と双璧をなす傑作(日本探偵小説全集第9巻には「百日紅の下にて」も収録されている。まさに横溝正史の入門書にふさわしい編集)。

中編という長さなら、「黒猫亭事件」や「車井戸はなぜ軋る」など、傑作はたくさんありますが、短編ミステリ特有の鋭い切れ味を楽しむなら、「探偵小説」に軍配あり。

さて、今回再読して面白かったのは、探偵小説作家の創作の過程をトレースできるということ。
物語は、(小説世界内の)実際の事件について推理するというより、それを元に探偵小説を書くとすれば自分ならこうする、といって駅の待合室で語りはじめるというもの。
登場人物の名前はこうしようとか、次男だから次郎としておこうとか。
犯人のアリバイを崩すときも、こういうことにしておけば、アリバイが偽装できる。というふうに、勝手に状況を作っていってしまう。
普通のミステリなら、刑事や探偵が捜査して分かっていくデータなんですけれど。
確かに、こうしていけば、ミステリは作れる!

メインのトリックも、過去の名作に実例があり、登場人物のひとりからはそれについて言及というか追求されるのですが、探偵小説作家は涼しい顔で、今回はこういう工夫をプラスしてよりよいトリックに仕立て上げている、と説明。そのとおりであり、完成度は抜群に上がってます。

このミステリの短編小説的なオチは、探偵作家の構想という妄想が、ほとんど的中していたというもので、ユーモアミステリっぽくなるところを、真犯人の死体を前に謎解きしていた、というブラックなテイストが加味されていて絶妙なデキになっています。
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『吸血蛾』 横溝正史 [横溝正史]

9月23日にフジテレビ系で『金田一耕助vs明智小五郎』が放送されました。
原作は横溝正史でも江戸川乱歩でもありませんが、地上波で、しかもタイトルに名前を冠するとは、この二人のキャラクターが永遠であることを改めて証明してみせた感じです。

で、“金田一耕助 復活祭”と、ひとり勝手に盛り上がり、『吸血蛾』を再読しました。
20130929.jpg
『講談倶楽部』昭和30年1月号~12月号に連載。
同時期に『小説倶楽部』に『三つ首塔』を、この前年にはやはり『講談倶楽部』に『幽霊男』を連載。
横溝正史の“通俗長編”時代です。

さて、『吸血蛾』は中高生のころに読んだきりで、なにもかもまったく忘れておりました。
ミステリーとしてのデキはもちろん高くはありません。
真犯人を指し示す手がかりは最後まで読者には提示されません。まあ、スリラーだから目をつむるとしても、金田一耕助に解決しようという熱意がまったく感じられないのも、物語としてはマイナス点。
(乱歩の超人的な怪人たちとは違って、『吸血蛾』のオオカミ男は、いたって普通の犯罪者ですから、金田一が本気になればすぐ逮捕されて長編にならないので仕方なし)

しかし、こんなプロットでも“横溝節”で語られると面白く読めてしまうから不思議です。
さくさくと、ほぼ一日で読了しました。

「小説を読み疲れて面白くないと思ったら、谷崎潤一郎を読むとよい」と言ってた人がいましたが、私の場合は横溝正史です。

小説では、華やかなファッション界を舞台に、トップモデルたちが次々に殺害されていきます。
冒頭のショーで着ていた服の色と同色の蛾が、死体にそえられます。
(モデルが七人で、虹の七色がそれぞれ当てられている)
映像的にも映えると思います。昭和30年代に映画化されていますが、白黒なので原作の魅力を十分に引き出してはいません。
ここは、ぜひドラマ化を!

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「貸しボート十三号」 横溝正史 [横溝正史]

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

さて、毎年元日には横溝正史を読むことにしておりまして、今年はこれを選択しました。

貸しボート十三号 (角川文庫)

貸しボート十三号 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1976/03/05
  • メディア: Kindle版


東京創元社の『本格ミステリ・フラッシュバック』でも取り上げられていた短編集。
昔から題名のインパクトに話題が集まりがちだった作品ですが、物語はしっかりとした普通の本格ミステリです。題名で損をしている?

東京の浜離宮沖で、男女の死体を乗せたボートが発見される。二十代前半の若い男と四十前後の女の死体。男は下着だけの裸で、女はスーツの上にコートを着ている。これが普通の死体ではなく、両者とも、首を半分切断されている。女の方は絞殺されたあと胸を刃物でひと突きされ、男は刃物で胸を刺されて絶命したあとで首を絞められている。

ボートで死体が流れ着くというのも奇っ怪ですが、この死体の状況が大きな謎となって、われらが金田一耕助と等々力警部を悩ませます。

この中編は、横溝正史の謎の構築パターンのひとつを表す良い実例です。
横溝は、犯人以外の人物が犯人の意図しない工作を死体に対して行うことにより、死体や犯行現場の状況に謎が生まれる、というパターンを得意としています。
例えば、犯人Aが被害者を刺し殺したあと、それを見ていた関係者BがAが去ったあと死体から首を切断して離れた場所に遺棄する、といったかんじです。

有名な長編でもこのパターンを使った傑作をいくつか思い浮かべられますね。

「貸しボート十三号」の場合、直接の殺害を実行する者が二人(それぞれ別の意図に基づき実行。共犯ではない。)、そのほか、事後に死体に手を加える者がひとり、たまたま現場近くにいて捜査を攪乱する行動を取る者がひとり、とかなり複雑なプロットとなっています。

そこは小説のうまい横溝正史ですから、データを巧みに読者に提示していき、混乱なく短い枚数に収めています。
横溝は短編の長編化を多く手がけていますが、この中編も核となる事件が複雑ですので、十分に長編になりえたのではないでしょうか。X大学ボート部(埼玉県戸田市にあるという設定。戸田といえば競艇!)というのが舞台になるのですが、登場人物も中編にしては多く、長編化しやすい理由のひとつです。

さて、昨年は文春で「東西ミステリー・ベスト100」の企画が実施されました。ご存じのように、国内のベスト1は『獄門島』。他にも、4つの作品がランクインしておりまして、その人気の強さがうかがえます。
21世紀になって、『容疑者Xの献身』や『64』のようなオールタイムベスト級の傑作も現れていますが、横溝正史の座はまだまだ安泰のようですね。
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「芙蓉屋敷の秘密」 横溝正史 [横溝正史]

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

さて、元日恒例の“横溝正史を読む”ですが、今年は「芙蓉屋敷の秘密」を選びました。
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いままではすべて金田一耕助シリーズから選択していましたが、面白い短編がネタ切れになってきたこと、そろそろ変化をつけたいと考え、戦前のノンシリーズの中短編からセレクトすることに。
ネットで調べると、「芙蓉屋敷の秘密」が興味深かったので、本棚から角川文庫『芙蓉屋敷の秘密』を引っ張り出してきました。

初読です。いろいろと発見がありました。

発表は天下の『新青年』。昭和5年(1930年)5月から8月にかけて連載されています。
当時「横溝氏がはじめて世に問う長編本格小説」と紹介されたそうです。
文庫版で130ページほど。いまなら中編といったところ。
横溝正史が雑誌編集長のかたわら小説を発表していた兼業作家時代の作品で、「鬼火」など耽美的な作風になる前のころです。もちろん由利麟太郎のシリーズもスタートしていません。

作品は、誌上で犯人当ての懸賞が企画されたというガチガチの本格物。
JDCの読書会でも戦前の本格物についてふれることがありましたが、こんな真っ当な、現在の意味でもちゃんと本格物と呼べる作品を横溝正史がこの時点で執筆していたことに驚きました。

お話は典型的なフーダニット。
女優の白鳥芙蓉が自宅の屋敷で刺殺される。
謎を解くのは、名探偵 都築欣哉。
ワトソン役にその友人の小説家 那珂省造。物語は彼の一人称で進みます。
都築探偵の知り合いに、篠山検事というのがいて、その検事のつてで捜査に参加。
そうですね、これはヴァン・ダインのフォーマットです。
名探偵の設定は、ずばりファイロ・ヴァンスです。
ヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』は「芙蓉屋敷の秘密」が発表された前年、昭和4年にわが国に紹介されています。当時、日本の探偵小説界に与えた衝撃は、ここで繰り返すまでもないでしょう。
「芙蓉屋敷の秘密」の第一章を読むと、ヴァン・ダインの影響を強く受けた書き方であるのがわかります。

同じく『グリーン家殺人事件』の影響を受けた浜尾四郎の『殺人鬼』は、昭和6年の発表です。
『殺人鬼』はより力の入った大長編ですが、文章のデキは横溝正史に軍配が上がります。
横溝の文章、古びません。

事件が複雑なわりには分量が少ないですし、犯人もピンときますので、傑作とは申しませんが、たいへん興味深い作品で、面白く読みました。
もう少し有名でもおかしくない作品です。
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「薔薇の別荘」 横溝正史 [横溝正史]

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

毎年、元日には横溝正史の小説を読むことにしおります。
今年は、「薔薇の別荘」を再読しました。

七つの仮面 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

七つの仮面 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1979/08
  • メディア: 文庫


角川文庫の『七つの仮面』に収録されています。

「薔薇の別荘」は、「時の窓」という謎の雑誌に昭和33年6月~9月の間、連載されました。
解説の中島河太郎のよれば、「長編と銘うって四回に文載された」そうです。
ストーリー紹介も、河太郎先生の文章を引用しましょう。
「戦後派女傑に数えられるキャバレーのマダムは、九人の親族と弁護士に金田一耕助、それに付添いの係累のない女秘書まで別荘に集めた。主客合わせて十三人である。
 客人は揃ったのに肝腎のマダムが現れず、死体となって発見される。」

文庫本のページ数にして60ページほどの短編ですが、“長編”と称しただけあって、非常に多くの登場人物が配置されています。中には、名前だけしか書かれなくて、描写もセリフもない者もいます。
しかし、マダムと、ヒロインの女秘書については詳細な背景が用意されています。
横溝正史は、短編を長編化したものが多いですが、この短編も十分に発展性を持っています。
なにせ、使われていない設定(別荘に薔薇がいっぱいの意味)や動きがない登場人物がたくさんいますので。

連載された昭和33年は横溝正史にとって多忙な年でした。
名作『悪魔の手毬歌』の他、怪作『悪魔の寵児』もこの年に連載されていますし、週刊誌には、「◇◇の中の女」シリーズを連載しています。
「薔薇の別荘」が長編の梗概のようになってしまったのはそのせいもあるかもしれませんね。
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「車井戸はなぜ軋る」 横溝正史 [横溝正史]

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

私は、毎年元日に横溝正史の探偵小説を読むことにしています。
横溝正史は、私のいまの趣味を決定づけた作家。
初めて『女王蜂』を読んだ13歳のときから、ほぼ毎日のようにミステリを読んでいます。

今年セレクトしたのは、「車井戸はなぜ軋る」です。
いちばん手に入れやすいのは、角川文庫『本陣殺人事件』でしょう。
20100101.jpg
ちなみに、過去のラインナップです。
1998年 『夜歩く』
1999年 「黒猫亭事件」
2000年 「鴉」
2001年 「幽霊座」
2002年 『本陣殺人事件』
2003年 「トランプ台上の首」
2004年 『三つ首塔』
2005年 「百日紅の下にて」
2006年 「迷路荘の怪人」 ※長編『迷路荘の惨劇』の原型短編
2007年 『悪魔が来りて笛を吹く』
2008年 「女怪」
2009年 「蜃気楼島の情熱」

「車井戸がなぜ軋る」は、昭和24年に「読物春秋」に発表された金田一耕助シリーズの短編。
といっても、金田一耕助が事件を解決するわけではなく、すでにある人物が事件の真相を見抜いてしまっています。
なんでも、雑誌に発表されたときは金田一耕助が登場しない、ノン・シリーズものだったそうで。
のちに短編集に入るときに金田一耕助ものに仕立て直したそうです。

ちなみに、金田一は『獄門島』の事件を解決した帰りにK村に寄ったそうで、時間軸では、
「百日紅の下にて」-『獄門島』-「車井戸はなぜ軋る」
となります。

事件の舞台はK村。本位田家という旧家が舞台。お約束の、対立する家は、秋月家。昔は、本位田家、秋月家、小野家は「K村の三名」といわれ、年番で名主を務めていたが、いまでは秋月家と小野家はすっかり没落。
本位田家の家長、大三郎が秋月家当主の妻と密通し、子をはらませ、両家によく似た男の子が生まれる。明確な違いは、秋月家の男子の目の瞳孔が二重であること。
ふたりの男子は戦争にとられ、戦後、本位田家の嫡子のほうが復員するも、顔を負傷し、両目との義眼になっており、ふたりを区別する手段が失われていた。はたして彼は、どちらの家の男なのか……。

と聞くと、あの名作『犬神家の一族』の佐清と静馬の関係が思い浮かびますね。
間違いなく横溝は、この短編を元にイメージをふくらませて『犬神家の一族』を執筆しています。
なにせ、あの「手形絵馬」まで登場しているのですから。
使い方はちょっと違っていますが。

さて、この短編を前回読んだのはもう10年以上前で、細部はすっかり忘れていました。
こんなに良くできたミステリだったとは、と驚きました。
正直、かなりの傑作。
小説の大部分は、復員した嫡子の妹(心臓が生まれつき悪く、土蔵に暮らす17歳の少女)が、ちかくの療養所で静養しているもうひとりの兄に送る書簡の形をとっています。
少女が復員した兄が実は秋月家の男ではないかという疑惑におびえる様子がうまく書かれていて、サスペンスが高まります。

元日から良い作品に恵まれました。
この勢いで、平成22年こそは良い年にしたいと思いました。
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