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『聖女の救済』 東野圭吾 [東野圭吾]

ドラマ「ガリレオ」のセカンドシーズン最終回で放送された『聖女の救済』。
発表時に読んで以来、5年ぶりに再読しました。
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ドラマでは、浄水器に毒をしかけたのが被害者の妻が北海道旅行にでかける直前でもおかしくないような描き方だったので、原作はどうだったか確認したかったのがその理由。
(湯川学が浄水器の周辺を見て「ホコリが被っている」とコメントするシーンはありますが、手元がアップにならず、どのていどのホコリの量なのかが不明です。)

まず、すばらしいリーダビリティーです。
東野圭吾の小説を読むのは3月の『カッコウの巣は誰のもの』以来4か月ぶりで、その間たくさん小説を読みましたが、東野圭吾のそれはズバ抜けています。
(その間、読むに耐えず途中放棄した長編小説が2つありました。)
日曜日の午後から読み始め、月曜日出張中の電車の内で読み終えました。

やはりドラマでは省略されている部分がたくさんあって(映像化ですからあるていどの省略はやむをませんが)、浄水器は1年前に設置されてから外されていないことがしっかりと検証されています。
また、被害者の愛人が殺害当日の朝、被害者といっしょに犯行現場でコーヒーを飲んでいて、毒が仕掛けられたのはそれ以降であるように見えるよう書かれています。
そのとき被害者の妻は北海道にいたという鉄壁のアリバイがあります。

初読のときは、『容疑者Xの献身』や『白夜行』を読んだ後だったので、平均的な作品だったという感想ですが、こうして改めて再読すると、ネタは小粒ながらスリリングな謎解きになっている印象です。

被害者の妻を疑う内海刑事と、それを否定する草薙刑事。
ふたりの意見の対立は、本格ミステリのいわゆる「推理合戦」のようです。
巧みなディベートのよう。
内海薫という女性のキャラクターを効果的に機能させていて、東野圭吾の技が堪能できます。

殺人事件はひとつしか発生しませんが、内海・草薙両刑事の論争により、事件の見方、どのレベルまで深読みするかその深さが一段ずつ深くなっていくリズムに緊張感があり、まるでエラリー・クイーンの傑作をよんでいるようなスリルです。

また、原作のほうが犯行動機に奥深さがあって、説得力のあるものになっています。
(昔の彼女の自殺をからめている。)

さすがは東野圭吾です。
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『麒麟の翼』 東野 圭吾 [東野圭吾]

話題の長編、東野圭吾の『麒麟の翼』を読みました。

麒麟の翼 (特別書き下ろし)

麒麟の翼 (特別書き下ろし)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/03/03
  • メディア: 単行本


1986年の『卒業』で登場した、東野圭吾のメイン・シリーズキャラクター、加賀恭一郎シリーズの最新作です。
『新参者』に続き、舞台は日本橋。

平凡な会社員がナイフで刺され、瀕死の状態で日本橋まで移動し、麒麟の翼の像の前で倒れた。
その会社員の財布を所持していた青年を警官が職務質問したところ、青年は逃亡。そのさい車にはねられ意識不明の重体に。状況はその青年が犯人であることを指し示しているが……

正直に申し上げて、東野圭吾の近年の傑作群と比較すると、凡庸な作品です。
捜査開始時点で容疑者がはっきりしているので、捜査陣の緊張感がないのは当然ですが、真相を追おうとする加賀刑事の捜査まであっさりと描かれてしまっているので、どうもいつものグイグイと読者をひっぱる力が感じられません。
被害者と加害者の家族の描き方も中途半端で、感情移入ができないまま、ストーリーだけが展開していく。

加賀刑事の目の付けどころは、さすがと思わせますが、事件解明はあっさり割れていく。盛り上がりに欠けます。

加賀の亡くなった父の担当看護師だった女性(TBSドラマ「赤い指」では田中麗奈が演じてました。)が再び登場しますが、エピソードは深まることもなく、これも中途半端。

本の帯には「加賀シリーズ最高傑作」とあります。しかし、それは言い過ぎでしょう。
とはいうものの、さすがは東野圭吾。平凡なプロットながらも、うまい味付けで読ませる小説にしています。

6月6日には、ガリレオ・シリーズ最新作の『真夏の方程式』が刊行されます。こちらで巻き返してもらうことを期待してます。
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『新参者』 東野圭吾 [東野圭吾]

~現代版 岡っ引き加賀恭一郎捕物帖~


読書の秋、しかも五連休ということで、東野圭吾の最新作『新参者』を読みました。
連休直前に出版されたばかりの長編です。

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練馬署から日本橋署に異動したばかりの加賀恭一郎刑事は、いわば“新参者”。
40歳代の独身女性が自宅マンションで絞殺された事件をめぐり、加賀のユニークな捜査がはじまります。

大きな事件は、この殺人事件がひとつだけ。
古典的な本格ミステリに出てくるような不可能犯罪でもないし、見立て殺人でもない、三面記事に載るような地味な事件です。

この作品の面白いのは、加賀刑事の捜査です。
作品は、九つの章からなっており、最終章を除き、それぞれ独立した短編として読めます。
例として第一章「煎餅屋の娘」で説明しましょう。
最初に浮上した容疑者である保険の外交員がアリバイを主張。彼が煎餅屋のおばあさんのところに医師の診断書をもらいに行った時間が重要になり、警視庁の刑事と加賀が聞き込みのため煎餅屋を訪れます。
じつは、殺人事件とはまったく関係なく、あるひとつの“嘘”が仕組まれていて、結果、捜査に思わぬ影響を与えるのですが、そこは名探偵の加賀が“嘘”を見抜き、捜査を整理します。
普通、刑事の仕事はこれで終わりなのです。
ところが、加賀はさらに一歩踏み込んで、警察の捜査が煎餅屋の日常をかき乱すことのないよう、アフターケアを施して“嘘”を“嘘”のままにしておきます。

と少しあいまいに書きましたが、章ごとの謎は“日常の謎”というほどのものではありません。
それより、人間関係を整理していく加賀の手腕が素晴らしい。

このように、殺人事件は関係者のエピソードを通じて断片的にしか読者に与えられません。
しかし、第五章あたりから、殺人事件の輪郭がはっきりと描けるようになってきます。
このあたりの描き方の上手さは、東野圭吾の独壇場でしょう。

全体を荒っぽくいうと、殺人事件の捜査にあたりながら、いくつもの人情話を浮かび上がらせる加賀恭一郎の大活躍、といったところ。
舞台が、江戸の情緒を今に残す日本橋であることからも、捕物帖のムードが感じられました。
加賀が市井にとけ込んで情報を収集しているところなどは、まさしく「岡っ引き」であります。

『悪意』事件や、『赤い指』事件など多くの事件を解決しながら、所轄の刑事でいる理由(たぶんあの事件の影響だろうとはなんとなく判ってはいますが)がはっきり書かれていたり、階級が「警部補」であると名言されていたりと、加賀恭一郎のデータも書き込まれていますので、こちらも注目かな。


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『ダイイング・アイ』 東野圭吾 [東野圭吾]

【今回も、円卓の騎士さんから感想をいただきました。いつもありがとうございます。】

二日で読んでしまった。といっても、たまたま読み始めたのが夜遅くだったので日をまたいでしまいましたが、時間にしたら10時間もかかっていないだろうと思います。相変わらず、読ませます。この前に読んだ同じく東野圭吾『夜明けの街で』もそうでしたが、とにかくどんどんページが進んでいってしまう。
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『夜明けの街で』は浮気の小説でした。もちろん謎が提示されますが、その解決(というか真相ですが)には少し無理があるかな、と思わされた。その点で確かに彼の作品の中では傑作とはいえないものであったろうかと思います。でも浮気にのめりこんでいく主人公の姿は迫真的。それがページを捲らせました。

この『ダイイング・アイ』は私は高く評価したい。もちろん、現実にそんなことあるのか、という問題からすれば、確かに突拍子もないと言った方が正しいでしょうが、それを感じさせないところが手腕というものです。女性が交通事故に会うところから始まりますが、視点はその事故を起こした男にすぐに移行します。

最近の彼の作品は、誰かが意図的に謎を作り出すわけではないものが多い。無理に指名するなら、構造が謎を作り出しています。より自然なものだと言ってもいいでしょう。こちらが無理して読む努力をしないでいいのは、このあたりに理由がありそうです。

この作品ではそれがかなり決まっています。実に自然にその謎に読者は引きつけられていくようです。これは単に私の推測ですが、登場人物の誰かが謎を作ったことにするよりも、こうした構造が作る謎のほうが、書くのが難しいのではないかと思うのですが、この作家はいとも簡単にそれを組み立ててしまうようです。それが驚き。

もちろん、それはトリックと呼べるようなものが少なくなり、あっと驚く真相というものではなくなっていく傾向を生み出してしまう訳ですが(彼がやる気になればそれができる作家だということは知っています)、読み終えたときに、それに不満を覚えることはほとんどありません。おかしな表現に思われるかもしれませんが、この作品は初めから終わりまで、均等に中身が詰められているという印象を抱きます。しばしば出来の悪い小説というのは、中身がえらく偏ってつまっていることが多く、中途ですかすか(何か説明ばかり)終わりがぎちぎち(辻褄合わせでさらに説明ばかり)なんてことが多いと思ったりするのですが、そんなことがない。きちんと均等になっている。おそらく、小説とはこのような姿をしているべきものなのではないかと思うのです。この作品は、それに加えて真相も納得のいくもので、私としては満足しました。わからなかったのは帯の惹句。「今度の東野圭吾は悪いぞ」とありましたが、「悪い」の意味が読み終わっても理解できない。どんな意味なんだろ。

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『ガリレオの苦悩』 東野圭吾 [東野圭吾]

東野圭吾の「ガリレオ・シリーズ」同時刊行のうちの1冊、『ガリレオの苦悩』を読みました。
こちらは短編集です。
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『聖女の救済』よりも面白く読みました。やはり「ガリレオ・シリーズ」には短編がよく似合う。
短編が5つ収録されています。

「落下る」(おちる)
ドラマでは柴咲コウが演じた内海薫刑事が初登場した短編。
『容疑者Xの献身』のあと、警察への協力をやめた帝都大学準教授・湯川学が、再び犯罪捜査に手をかすようになったきっかけの事件。
これと、あとの「操縦る」は、先日フジテレビで放送された「ガリレオφ」の原作です。
作品的には、やや弱いかな。

「操縦る」(あやつる)
完成度では、この短編集では1、2を争う傑作。
犯人が自白したあとも、まだナゾが残っているという東野圭吾らしいミステリ。

「密室る」(とじる)
松本清張の短編を思わせる佳作。
甦る過去におびえる幸福そうな家庭。
すっと影がさして、暗転する様が、悲劇的に描けています。
私は好きな作品です。

「指標す」(しめす)
容疑者の女性は、中学生の娘と二人暮らし。『容疑者Xの献身』の設定を思い出します。
作中、草薙刑事も「あの手の母娘を見ると、冷静な判断ができにくい」とこぼす場面も。
娘の嘘を、簡単な質疑応答で見抜くガリレオ湯川の鋭さが見物。

「撹乱す」(みだす)
珍しい連続殺人モノ。
「悪魔の手」と名乗る殺人犯が、警察とガリレオ湯川に挑戦状を送りつける。
「悪魔の手」は、犯行方法は判るまい、と豪語。被害者は、事故に見せかけて殺害されていく。
デアンドリアの『ホッグ連続殺人』を彷彿とさせる作品です。
設定にオリジナリティはないかもしれないけれど、5つの中では一番好きな作品です。
明日も会社があり、早く寝なければいけないのに、深夜一気に読み切った作品でした。

『聖女の救済』には少しがっかりしましたが、『ガリレオの苦悩』では、「東野圭吾、健在なり」と実感。
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『聖女の救済』 東野圭吾 [東野圭吾]

「ガリレオ・シリーズ」の最新長編『聖女の救済』を読みました。
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物理学者・湯川学が謎を解くこのシリーズの第2長編です。第1長編は、あの『容疑者Xの献身』ですね。
たいへん期待して読みましたが、読後の印象は東野圭吾としては「平均的作品」。
面白くない、というわけではありません。東野圭吾の最新長編ということで、どうしても読み手のハードルが高くなってしまっていけません。

キャラクターの動かし方はさすがに上手いです。
湯川学、その友人の草薙刑事、紅一点の内海刑事など捜査側の登場人物の描き分けは抜群で、3人の微妙な距離の設定は職人芸。
福山雅治や柴咲コウが出演したドラマと映画がヒットしてます。この影響が作者にまったくなかったというわけではないようです。
『容疑者X~』と比較すると、湯川の描き方にも変化がみられます。
いままでは「変人」であることを強調する描写が多かったのですが、『聖女の救済』では、湯川学のスタイル、ファッションセンスの良さなどがさりげなく描かれています。
『容疑者X~』の主人公は、犯人の数学者でした。『聖女の救済』の主人公はオーソドックスに探偵と刑事だったということでしょう。

一方で、謎が少し小粒でした。
被害者は毒の入ったコーヒーを飲んで殺害されます。このコーヒーは被害者が自分で淹れたもの。謎のポイントは、どのようにして毒が混入されたか。
そして、毒が混入されたと考えられる時刻には、容疑者に鉄壁のアリバイが。
アイデアとしては、短編を支える程度のものです。これにどのような肉付けをして長編に仕立てるかが腕の見せどころです。今回は少し作り込み度が低く、やや冗長な印象になってしまったのが残念なところ。

ただ、読了直後は、あっさりした謎解きだったという印象でしたが、あとで振り返って考えてみると、犯人の計画が深慮遠謀なものであることに気づきました。確かに、犯行計画としては独創的。

柴咲コウが演じた女性刑事・内海薫が広島まで聞き込みにいくシーンで、彼女がiPodで音楽を聴いてます。その曲が福山雅治の歌なのには笑いました。東野圭吾、遊び心があります。
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『使命と魂のリミット』 東野圭吾 [東野圭吾]

【またも円卓の騎士さんからご協力をいただきました。いもつありがとうございます~】

 順番が来たのでようやく読みました。この作品は、いわゆるミステリーではないといってもいいでしょう。主に、病院に勤めるレジデントと、その病院にテロを計画している犯人の視点で描かれている作品です。だんだん病院に対するテロが明らかになっていくと同時に、レジデントにも何か裏が隠されていることも明らかになっていきます。

使命と魂のリミット

使命と魂のリミット

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/12/06
  • メディア: 単行本


 もちろん、本格ではないので、派手なトリックはありません。犯人当てにも当然なっていません。登場人物と関係者が段々とクロスしていくところが話のメインになっているわけですが、そんな作品は幾らもあります。

 だから、凡庸な作品に見えますが、しかし、そうではないのです。面白い。なんだかわからないけど面白いのです。どんどん読んでしまう。ラストだってありきたりだと言ってもいいのに、キチンとよい読後感を得てしまう。これは普通の小説で、それもかなりよくできた小説だとしかいえません。リズムがいいのでしょうか。何も目新しいことは書かれていないのに、次々にページをめくってしまう、ページ・ターナーというべき作家です。

 しかしよく考えてみれば、ごく普通の小説を読むことが少なくなったと言ってもいいでしょう。普通の小説って何か最近は面白くなくて仕方がないのです。昔は私小説が槍玉に挙げられていましたが、今はそれどころではない。ことごとく面白くないと言っても差し支えないです。もちろん、異才というのはたまにいます。倉橋由美子とか、石川淳とか、こうした才能は今は余り見られません。辻邦生で終わったのでしょうか。

 だから久しぶりに面白い普通の小説を読んだという気がしています。安定したリズムで、話を前に進めていく、これだけのことがこんなに難しいのか、と思わずため息をついてしまう、そんな作品です。東野圭吾にいま書けない小説はないのでしょうか。一番のミステリーは東野圭吾その人だという気がしました。


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『分身』 東野圭吾 [東野圭吾]

東野圭吾が1993年に発表した長編ミステリ『分身』を読みました。

分身

分身

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1996/09
  • メディア: 文庫


東野圭吾は、1996年を境に劇的に進化したように思えてなりません。
1996年以降は、
『名探偵の掟』1996年
『どちらかが彼女を殺した』1996年
『悪意』1996年
『探偵ガリレオ』1998年
『秘密』1998年
『白夜行』1999年
と、きわめてレベルの高い作品を発表するようになりました。
2000年以降の活躍は、あえて作品名をあげるまでもないでしょう。

1980年代は、『放課後』、『卒業』、『学生街の殺人』など、“学園ミステリ”作家というイメージが強かった東野圭吾。
1990年代前半は、『鳥人計画』、『変身』、『天空の蜂』など、先端科学の知識を小説の背景に取り込んだ“情報小説”的なミステリが目立っていました。
もちろん、1995年までの作品も面白いですが、好きな作家のひとりに入れるほどではなかったと記憶しています。
ミステリ作家にはきわめて珍しい、代表作が中期以降に存在するタイプ。レベルを上げ続けている作家です。

そしてこの『分身』は、1990年代前半の「“情報小説”的なミステリ」時代に書かれた作品です。
自分の出生の謎を探り始める、東京と北海道のふたりの若い女性。
やがて彼女たちは互いに生き写しのように外見がそっくりであることに気づく。
ふたりはそれぞれ別々に調査を進めるうちに、20数年前に試みられた医学上のある実験の存在にたどり着く。

「うり二つ」である理由は、ミステリ的なトリックではなく、純粋に医学的な処理によるもので、メインとなる謎の解明はどうしても科学的な知識の解説になってしまっています。
ただ、そこは東野圭吾ですから、謎に迫ろうとするふたりのヒロインの活躍をサスペンス豊かに描いており、読者を飽きさせません。キャラクターの作り方、会話の自然さなどはまったく上手い。
しかし、比較的展開が読みやすく、1996年以降の代表作群と比較すると、評価はワンランク下がってしまいますね。
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『秘密』 東野圭吾 [東野圭吾]

第52回日本推理作家協会賞(長編部門)受賞作、東野圭吾の『秘密』を読みました。

秘密 (文春文庫)

秘密 (文春文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/05
  • メディア: 文庫


映画化もされましたので、設定だけはご存じの方も多いと思います。
「主人公の妻と娘がバス転落事故に遭い、妻は死亡、娘は軽傷ですんだ。しかし、娘が意識を取り戻すと、娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった」というもの。
人格の入れ替わりという設定は、小説においては取り立てて珍しいものではないでしょう。
JDCの読書会でも取り上げた西澤保彦の『人格転移の殺人』もそうですし、東野圭吾にも、ズバリ『変身』という題名の長編小説があります。

『変身』は『秘密』の7年前に発表されています。
『変身』では、人格入れ替わりが、脳移植手術によるものという設定で、いちおう科学的な説明がなされています。
しかし、『秘密』では、なぜ妻の人格が娘の体に宿ったのかは説明されていません。
登場人物たちは、それを奇蹟としてすぐに受け入れます。
くどくどと説明せずとも、物語のおもしろさで読者に受け入れてもらえる自信があったのかもしれません。
エンジニアだった東野圭吾は、初期、だいたい1990年代半ばまでの作品には、科学技術を背景に書き込み、リアリティを醸造する手法を好んで取り入れていました。たとえば、『鳥人計画』、『変身』、『分身』、『天空の蜂』などですね。
小説家としての技量が飛躍的に伸び、自信もついて、そういった小細工をせずとも勝負できると考えたのでしょうか、1990年代後半からは、長編ではそのような手法を使うことはほとんどなくなりました。

『秘密』は、推理作家協会賞を受賞してはいますが、狭い意味でのミステリーではありません。
事件はありませんし、謎も小さなものです。
主人公の夫と、娘の姿をした妻が共有する“秘密”の行方が読者をひっぱります。

東野圭吾は、題名をつけるのもうまい。
この『秘密』も、最後まで読んで、はじめて真の“秘密”がわかるようになっています。
『容疑者Xの献身』や『悪意』なんかもそうですね。
推理作家らしい題名の付け方です。

さて、この「感動の物語」ですが、私は涙こそしませんでしたが、それでも後半は喫茶店で一気読み。
カップに半分残ったコーヒーがすっかり冷めてしまいました。
東野圭吾のストーリーテラーとしての手腕を充分に堪能できる作品です。

東野圭吾の普通小説も面白いですが、コアなミステリファンの私としては、早く『容疑者Xの献身』に続く、湯川准教授シリーズの長編を読みたいですね。


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『幻夜』 東野圭吾 [東野圭吾]

東野圭吾の長編ミステリ 『幻夜』 を読みました。

幻夜

幻夜

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 文庫


阪神・淡路大震災の混乱に乗じて殺人を犯した水原雅也と、それを目撃していた新海美冬。
ふたりの男女が重ねていく犯罪を描いた物語。
名作『白夜行』の「唐沢雪穂-桐原亮司」のふたりの関係とは、相似形です。

しかし、『白夜行』では「雪穂-亮司」の視点描写がいっさいなかったのとは異なり、『幻夜』では、ペアのひとり水原の心理描写があり、彼から見た悪女・新海美冬が描かれています。

『白夜行』では得体の知れない「悪」に読者は恐れを感じたわけですが、『幻夜』では「悪」の半面が判っているので、ミステリアスな部分が薄まり、ややミステリとして減速していると思います。
とはいうものの、面白い小説であることは間違いありません。

東野圭吾は、次々と巧妙な物語を提示してくれます。
『秘密』や『手紙』、『分身』など過去の作品の中にもまだ未読のものがありますし、2007年に発表された『ダイイング・アイ』や『夜明けの街で』もこれから購入です。
これからどんな物語を語り聞かせてくれるのか、たいへん楽しみです。

【以下、『幻夜』の真相に少しだけふれます。】

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