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『新世界より』 貴志祐介 [貴志祐介]

文庫にして上中下3巻となる貴志祐介の大長編『新世界より』を読みました。

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/01/14
  • メディア: 文庫


第29回日本SF大賞を受賞しているので、ジャンルとしてはサイエンス・フィクションということでしょうけれど、通読したところでは、ファンタジーという印象です。

念動力(サイコキネシス)を操れるようになった人類の、1000年後のお話。
スーパーパワーを手に入れた人類は、当然のごとく闘争と殺戮を繰り返す。やがて、この能力を持ちながら、人間同士が平穏に暮らせる社会のシステムを確立したことによって、主人公たちが暮らす1000年後の日本は、一見、牧歌的で平和な光景が広がっています。
まず、読者は10代の主人公たちの視点で、平穏な新世界を読み進めていきます。

この平穏を維持するシステムがほころんでいき、成長した主人公たちが人類の存続をかけて戦うことになるのですが、このあたりでは、冒険小説的に物語は展開。やたらと人が死にます。貴志祐介の特長です。とにかく死体が多い。

さて、この小説は、設計が優れています。
単にSF好きの心をくすぐるためだけの奇抜な状況設定に留まらず、この新世界の設定は、物語を駆動せさるための危機を出現させるために必要なものです。
そして、ラストで主人公たちが反撃に出るアイデアの元になるのも、この新世界の設定。
小説内での因果関係は、当然、

新世界の状況(ルール)→危機→反撃のアイデア

となっていくわけですが、小説を設計していくときは、やはり逆に、

反撃のアイデア→危機→新世界の状況(ルール)

と発想していったのではないでしょうか。
推理小説が、犯人やトリックを先に考えて、それを活かすように舞台や動機、登場人物を配し、どんな事件にするか考えるように。

小説には、グロテスクな生物が多く登場します。
昆虫とか軟体生物の嫌いな私は、活字に留まってくれてほんとうに助かりました。
挿絵なんかあったら、厳しかったかも。
コミックやアニメにもなったそうですが、手に取る気にもなりません。
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『ダークゾーン』 貴志祐介 [貴志祐介]

最近、貴志祐介の小説にハマっています。
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『ダークゾーン』のあと、デビュー作の『十三番目の人格-ISOLA』を読みました。
いまは、文庫本3冊の大長編『新世界より』を読んでいる途中です。

さて、『ダークゾーン』。
気がつくと、主人公はナゾの将棋に類似したゲームの駒のひとつになっていて、駒同士が実際に殺し合いを行うことに。
ルールは将棋のように、王将を殺せば勝利。駒には、歩兵のほかに、飛車や角行のような特別な駒もいて、さらに「成る」ことでパワーアップする。
“ダークゾーン”とは、このゲームが行われている空間のこと。
先に4回勝利すると、相手チームに勝ちをおさめたことになり、“ダークゾーン”から脱出できると考えられ、駒にさせられた人間たちは、とにかく相手チームを倒すことに全力を傾けることになる。

デスゲームに、異空間への転送テーマを融合させたようなファンタジー。
よくありそうなお話しですが、貴志祐介は圧倒的なエネルギーでこの「人間将棋」の戦いを描いていきます。
主人公はプロ棋士のタマゴで、王将にさせられています。彼の指示どおり他の駒を動かすことができる。
そして相手チームの王将も、主人公と同じくプロ棋士のタマゴ。
ふたりの火花を散らす頭脳戦がたいへん面白い。

この7番勝負の合間には、現実世界の章が挟まれていて、少しずつ“ダークゾーン”のナゾに迫っていきます。

ゲーム的な戦いを描いた、エンターテイメントに徹した小説です。
好みが合わない人は、まったく受け付けないと思いますが、私は大変楽しめました。
ページを捲るのももどかしい、あの感覚を味わえました。

“ダークゾーン”のナゾは、あっけない。
昔からある、安易な解決法です。終盤、なんとなくそうだろうな、と予測可能。
『黒い家』や『クリムゾンの迷宮』などの代表作と比べて、評価が低い理由かもしれません。

しかし、オチには衝撃はなくても、読んでいる最中のストーリーの勢いは半端ではなく、それだけでも充分この物語には価値がある、と思います。
つらく厳しい現実社会をいっときでも忘れさせてくれる、それが私が小説に求めるもののひとつだからです。
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『硝子のハンマー』 貴志祐介 [貴志祐介]

角川文庫の最新刊でもある『硝子のハンマー』を読みました。

「このミステリーがすごい!」では6位、「本格ミステリ・ベスト10」では5位にランクされた作品です。
この年には、『生首に聞いてみろ』 『暗黒館の殺人』 『螢』 『臨場』 などが発表されていましてなかなかの当たり年でした。そのせいで目につかなかったわけではありませんが、まったくのノーチェック。
今年のJDC合宿で取り上げた巽昌章の文章の中で「リアリズム系本格」の例として挙げられていたので、その存在を意識していたところでのタイムリーな文庫化でした。

貴志祐介の小説を読むのは初めてです。彼は『黒い家』や『クリムゾンの迷宮』などが有名なホラー系の作家。あとがき代わりの対談によると、「一回はど真ん中の本格を書いてみたかった」とのこと。
『硝子のハンマー』は文句なく上質な本格ミステリに仕上がっています。

六本木センタービルの12階にある社長室。エレベーターで12階に上がるには暗証番号が必要。フロアには防犯カメラが光り、ほかにも2人の役員と3人の秘書がいた。完全な密室としか考えられない社長室で、社長の他殺死体が発見……
防犯コンサルタントという怪しげな男と、女性弁護士がこの謎に迫ります。
社長室に出入りしたはずの犯人について、チェスタトンの「見えない男」について言及されたり、詳細な平面図があったりなど、本格のムードはたっぷり。

日本推理作家協会賞を受賞していますが、その名に恥じない傑作です。
本格ミステリの様式を抽出し、現代の作品に仕上げていくのはなかなか至難の業です。
あまりにリアリズムに徹したり、“今”を意識しすぎたりすると「本格」とは乖離したりするものですし、また、あまりに古典の様式に忠実すぎると新鮮さに欠けるもの。
貴志祐介は、巧みに本格ミステリのエッセンスを抽出してそれを作品に反映しているので、『硝子のハンマー』を読んだときに、これは本格だ!と言わざるを得ない、それでいて、新しさを感じる作品になっています。

密室トリックに挑む二人の探偵役が仮説を組んでは崩し、また仮説を構築する過程は興味深いです。
ワトソン役の女性弁護士が提示する突拍子もない仮説がユーモラス。

対談によれば、貴志祐介はこのシリーズ化を進行中とのこと。期待です。

【以下、『硝子のハンマー』の真相に少しだけ触れます。】

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