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『乱れからくり』 泡坂妻夫 [泡坂妻夫]

泡坂妻夫の第2長編 『乱れからくり』 を再読しました。日本推理作家協会賞受賞作です。

乱れからくり 日本推理作家協会賞受賞作全集 (33)

乱れからくり 日本推理作家協会賞受賞作全集 (33)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 1997/11
  • メディア: 文庫


ストーリーはいまさら説明する必要はないでしょう。
異形の〈ねじ屋敷〉や、庭園に生け垣で作られた五角形の迷路、洞窟の冒険などなど、探偵小説らしいパーツがこれでもかとつぎ込まれた作品。
雑誌「幻影城」が存在しなければ、絶対にこの時代には発表されなかったであろう、いい意味でレトロな圭作。

本格ミステリの代表的作品のひとつ、とも言われていますが、パズラーとしてはそれほど完成度は高くありません。ひとつひとつの殺人事件が詳細に検証される間もなく、次々と殺人が発生します。
手がかりの提示の仕方も、あまりフェアとは言えません。
第1長編の『11枚のとらんぷ』が横溝正史の『本陣殺人事件』と『獄門島』にあたるとすると、この『乱れからくり』は『八つ墓村』です。
探偵小説テイスト満載のスリラーですね。

近年の館ミステリ、『暗黒館の殺人』や『哲学者の密室』などと比較すると異形の館の表現がやたらあっさりしているような気がしますが、このくらいの省略があったほうが、逆に五角形迷路が強調されます。
重厚長大化してしまった最近の本格ミステリに対するテーゼとして読むと楽しいかも。
「省略」と「強調」の良い手本です。

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『11枚のとらんぷ』 泡坂妻夫 [泡坂妻夫]

昨年末に「本格ミステリ・ベスト10~国内オールタイム編」であげたこともあり、久しぶりに再読しました。3読目です。

第1部では、真敷市という架空の街の公民館で、地元の奇術クラブが開催するマジックショーの様子が描かれます。ところがこのショーに参加していたはずの女性アマチュアマジシャンが自宅で殺害されているのが発見されます。どうやら、自分の出し物が終わると、こっそり自宅に帰ったらしく、残ってショーを演じていた奇術クラブの会員たちにはアリバイが成立します。

第2部は、奇術クラブのひとりが書いた「11枚のとらんぷ」という自費出版の「奇術小説」がそっくりそのまま挿入されています。
第3部は、日本で国際的なマジックショーが開催され、奇術クラブの会員たちもそれに参加することになります。そこで真相に気づいた「11枚のとらんぷ」の作者が犯人を指摘するというストーリー。

全編、奇術づくしのミステリです。作者の泡坂妻夫は、マジックにも造詣が深い、というかマジックの専門家であることは有名ですね。この小説は彼の第1長編ですが、はやり自分の得意な分野を舞台にするのは有力なひとつの手法であることがよく判ります。

このミステリには、犯人が仕掛ける大きなトリックはありません。魅力は、いたるところに張られた細かい伏線が、最後に収束する美しさです。
読者には、膨大な量のデータが提示されます。舞台となる公民館の平面図(エラリイ・クイーンの『ローマ帽子の秘密』が思い出されます)、2ページ見開きにおよぶショーの詳細なタイムテーブル。そして作中作「11枚のとらんぷ」。「11枚のとらんぷ」は、登場人物たちが「実際」に登場し、「実際」の出来事が記述されているという設定のショートショート集なのですが(ややこしい)、この中にも犯人当てのデータ満載なので、気を抜けません。
パズラーとして文句のない傑作です。
エラリー・クイーンの名作と比較しても遜色ありません。

ところが、緊密に張り巡らされた伏線による構造美を見せる泡坂の長編は、じつはこれが最初で(いまのところ)最後です。
日本推理作家協会賞を受賞した第2長編 『乱れからくり』は、伏線の妙というよりは、犯人の大仕掛けと、古来のからくり玩具がかもすムードを楽しむミステリで、『11枚のとらんぷ』とはまた違った魅力で輝いています。探偵やワトソン役にもはっきりした個性が与えられており、ヒロインにも陰影があって、物語の骨格は『乱れからくり』のほうがいいですね。

そして早くも第3長編 『湖底のまつり』 で、本格というよりは、サスペンス風のロマンあふれるミステリに挑戦しています。もちろんひとつ大きな仕掛けがしてありますが、古典的なパズラーから離れるのがあまりに早かったような気がします。残念です。
『陰桔梗』による直木賞受賞など、のちの活躍をみると、泡坂妻夫のミステリ作家としての資質はどうやらそっちのほうにあるようです。

評価は、古典級名作ということで、★★★★★ です。


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