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『恐怖の研究』 エラリー・クイーン [エラリー・クイーン]

今年は、シャーロック・ホームズが世に出てから130年。
130年前の1887年、『緋色の研究』が出版されております。

恐怖の研究 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-10)

恐怖の研究 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-10)

  • 作者: エラリイ・クイーン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1976/11
  • メディア: 文庫


そのせいか、東京創元社の『ミステリーズ』も早川書房の『ミステリマガジン』も最新刊は、シャーロック・ホームズの特集です。
NHKもイギリスBBC制作のドラマ『SHERLOCK』のシーズン4を放送(イギリスでの放送は昨年)、視聴者参加型推理ドラマ『謎解きLive』の最新作は『CATSと蘇ったモリアーティ』でした。

パロディ、パスティーシュといった二次創作の対象にされた頻度が史上最も高いキャラクターは、シャーロック・ホームズで間違いないでしょう。まさに不滅の名探偵。

名のあるミステリー作家も、自作にホームズを登場させています。
まだコナン・ドイル存命中にやらかして権利問題になった、モーリス・ルブラン。『ルパン対ホームズ』などで、堂々と登場しています。
完全なパスティーシュですが、ジョン・ディクスン・カーも『シャーロック・ホームズの功績』でホームズをよみがえらせています。

そして、エラリー・クイーン。
作品が有名ではないので、あまり知られていませんが、探偵エラリーとホームズが同じ事件を追う夢のコラボが実現しています。1966年発表の『恐怖の研究』です。
“真夏のシャーロック・ホームズ祭”ということで再読しました。

ある日、新作執筆にいそしむ探偵エラリーのもとに、ワトスン博士の未発表原稿が届く。
興味本位で読んでみると、あの「切り裂きジャック事件」の解明にホームズが乗り出す、という話。
まず小説『恐怖の研究』の前提を確認しておきますと、エラリーの住む世界では、シャーロック・ホームズとワトスンは実在の人物という扱い。
未発表原稿が本当にワトスンが執筆したモノか、という確認からお話は始まりますが、ここで厳密にぐだぐたやっても面白くないので、用紙が当時のものだとか、文体が明らかにワトスンのものだとかいう脆弱な論拠で、あっさりとクリアされます。

執筆に忙しいエラリーは、ワトスン博士の原稿を一章ないしは二章ごと、小刻みに読んでいきます。
つまり、読者はエラリーの章(20世紀)とホームズの章(19世紀)を交互に読んでいく形に。

ワトソンの原稿パートでは、ホームズとワトスンはもちろん、マイクロフト、ハドソン夫人、ワトソンの妻のメアリー、レストレード警部、ベーカー街イレギュラーズ、モリアーティ(言及のみ)など、ホームズ世界のキャラクターがオールキャストで登場。

エラリー・クイーン、シャーロック・ホームズ、切り裂きジャックという豪華盛り合わせなのに、なぜ知名度が低いのかといえば、ずばり、作品のデキがあまり良くないから。

もともとワトスンの原稿の部分は、映画のノベライズとした企画されたもので、執筆もクイーンではなく、ポール・W・フェアマンが小説化しています。
それを作中作にして、クイーンが外の皮を書いて挟んだ、というからくり。
「切り裂きジャック」を追うストーリーもいまいちだし、エラリーの部分もきわめて短く、やっつけ仕事の感があります。

そもそも『恐怖の研究』は、ペーパーバック書き下ろしで、どこまでクイーン本人が関与していたか怪しいところで、『二百万ドルの死者』同様、「聖典」ではなく「外典」として整理してもよい作品もしれません。

とはいえ、私はシャーロック・ホームズも好きだし、エラリー・クイーンも好き。
今回も、たいへん楽しく再読しました。

ちなみに、現在、絶版です。
訳があまり良くないので、新訳してくれると嬉しい(無理でしょうが……)
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