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『日本から城が消える』 加藤 理文


日本から城が消える (歴史新書)

日本から城が消える (歴史新書)

  • 作者: 加藤 理文
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2016/08/04
  • メディア: 新書


新書らしく、ショッキングなタイトル付けですが、もちろん、文字どおり日本の城郭が消失するわけではありません。

昭和30年代を中心に、城の再建ブームがおきました。
その多くは、太平洋戦争末期に米軍が行った焼夷弾による空襲で消失した近世城郭の天守を、鉄筋コンクリート造で再建したものでした。

平成に入ると、文化財保護の観点から城郭建築の再建に対する規制が強化され、従来工法(木造)による再建が中心になります。
また、実際に存在した建築物の忠実な再現であることも、もとめられるようになりました。

鉄筋コンクリートは、なんとなく木造よりも堅牢で、長く保ちそうな印象がありますが、意外にも建物としての寿命は短いのです。
長崎県の軍艦島にある鉄筋コンクリートによる建造物は、我が国ではもっとも古い物にあたりますが、急速に風化が進んでいます。

昭和30年代に建てられた鉄筋コンクリート製の天守が、いま、寿命を迎えつつあります。
では、あらたに建て直せばいい、ということになりますが、大きく二つの障害があります。
ひとつは、木造で再建する必要があること。
もうひとつは、かつての姿に忠実な再建であること。

五層の大規模な天守を木造で建てるとなると莫大な費用がかかります。
江戸城や名古屋城の天守について、木造による再建の話がありますが、費用は数百億円です。
また、資金が調達できたとしても、現代では巨大な木材を調達するのが困難です。

昭和の再建では、史実を無視した天守が多く建てられています。
実際に江戸時代に建っていた天守のデザインが不明なのに、想像で建ててしまったり、
中には、天守がなかったにもかかわらず、天守風の建物を作った例も少なくありません。
それらは、文化庁の規制を厳格に運用するならば、立て替え不可能となります。

かくして、現在の鉄筋コンクリート造の天守は、寿命がくると次々に「消える」運命にある、というわけです。

この本は、そのあたりの事情を詳しく、しかし分かりやすく解説してあります。
このテーマをあつかった本が他にないこともあり、現在の城郭の問題を知るには、必読の書といえるかも知れません。

私の未来予想ですが、日本の城が「消える」ことはないでしょう。
文化財保護がもっとも重要視されるべきことではありますが、現代の城は、文化財としての側面だけでなく、観光資源や地域のランドマークという性格も併せ持っています。
それらとの兼ね合いで、ひとつずつ特例を認めていくべきである、と思いますし、そうなっていくのではないでしょうか。

さすがに、鉄筋コンクリートによる再建は不可能でしょう。
建築基準法等の法令の特例を広く認めて、木造による再建を容易にすべきです。
そして、多少意匠(デザイン)が不明でも、甘く見るくらいの度量が文化庁には必要となるでしょう。


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