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『連合艦隊ついに勝つ』 高木彬光 [高木彬光]

昭和を代表する推理作家、高木彬光が1971年に発表した、いまでいう「架空戦記」にあたる小説『連合艦隊ついに勝つ』を読みました。
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「私」の友人である、軍事雑誌『光』(『丸』を意識して作った名前でしょうか)の編集部に勤める東郷平七郎。彼はヘビーな軍事マニアで、太平洋戦争の海戦の記録はほとんど記憶している。その彼が、ひょんなことからタイムスリップし、四つの重要な海戦を有利に導くように提督たちにアドバイスする、という話。
設定はいささか強引で、高天原からの使いだと称する東郷平七郎のハッタリを信じてしまう軍人たちもどうかも思いますが、まあ、海戦の成り行きをピタピタと当てられては信ずるほかはないでしょうね。

その四つの海戦とは、
「ミッドウェー海戦」
「第一次ソロモン海戦」
「第三次ソロモン海戦」
「レイテ沖海戦」
です。
「タイムトラベルもの」にはいくつかのパターンがあります。
そのひとつで、いわゆる“タイムパラドックス”を回避するために用いられる設定が、「過去に戻り歴史を変えよう介入しても、大筋の歴史は変えられない」とするもの。
この『連合艦隊ついに勝つ』も、個々の海戦については史実をひっくり返して戦術的勝利をおさめますが、日本の敗戦というフレーム自体は変えられないという結末。
「帝国海軍は、敗れても悔いなき戦いを戦いぬいた」というラストの言葉にあるとおり、「ついに勝つ」とは、帝国の勝利を示すものではありません。

「悔いなき戦い」とあるとおり、この四つの海戦は、「もし~していたら……」という明確なテーマがあることが共通しています。「ミッドウェー海戦」はもし爆装のまま攻撃機を発艦していたら『赤城』以下の空母が誘爆を起こすことはなかったし、「第一次ソロモン海戦」ではもし輸送船団も攻撃していたら、ガダルカナルの戦いは多少有利に展開したかもしれません。

とくに、「レイテ沖海戦」で、戦艦『大和』以下の栗田艦隊がそのままレイテ湾に突入していれば、アメリカ軍は大変なことになっていたに違いありません。
マニアならよく知っているそんな「もし」をシミュレートしてしまうあたり、なかなか鋭い狙いの小説になっています。
高木彬光も楽しんで書いていたのでしょう。彼の傑作に共通する文章の勢いが感じられます。跳ねるようなリズムがあります。高木はミステリでもよく戦史を引用しています。ダンケルクの撤退とか。もともと戦記好きだったのでしょう。
高木彬光のベスト10に入る傑作です。

ただ、私程度のミリタリーマニアでも気づく史実の誤記がいくつかありました。
たとえば、角川文庫版の128ページに「第二次ソロモン海戦」で「ヨークタウン」を大破、とありますが、正しくは「エンタープライズ」ですね。「ヨークタウン」はすでに「ミッドウェー海戦」で撃沈しています。

さて、この小説で面白いのは、タイムスリップする方法です。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」では、自動車型のタイムマシン、
「バブルへGO!!」では、洗濯機型タイムマシン、
「ファイナル・カウントダウン」では嵐、
ですが、『連合艦隊ついに勝つ』ではなんと……
これは読んでからのお楽しみです。高木彬光らしいセンスのなさというか豪腕というか。
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コメント 2

天下布武

タイムスリップものの、決して未来は変わらないバージョンで、
『戦国自衛隊』を彷彿としますね。


「バブルへGO!」は思いっきり変わりましたが^^


先日の山の上で教えていただいた「タイムスリップする方法」、
まさかそれほどぶっとんでいるとは・・・^^

徹底的に口コミで読まれることを、いやさ、売れ行き伸びることを
念頭に書いたなっ^^



by 天下布武 (2009-08-24 13:04) 

歴史はIF

80年代前半までは連合艦隊ついに勝つ以外にたいした架空戦記があまりなかったって本当ですか?。
by 歴史はIF (2015-08-20 13:08) 

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