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『社会部記者』 島田一男

【またまた円卓の騎士さんの感想です。いつもありがとうございます。】

 協会長も勤めた大変な大御所です。彼が協会賞をとった作品を読んでみました。少し前にNHKが衛星で『事件記者』の映画版を連続放映しまして、それを見て、全然古びていないな、と思ったものですから、彼に関心を持った次第。後世の人間なんてそんなものです。

社会部記者 日本推理作家協会賞受賞作全集 (6)

社会部記者 日本推理作家協会賞受賞作全集 (6)

  • 作者: 島田 一男
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 1995/05
  • メディア: 文庫


 さて、今まで私が読んだ島田一男は『捜査本部』と『最終都内版』(いずれも徳間文庫)です。どっちもバラバラ事件を扱ったもので(当時も流行っていたのかバラバラ)、面白いと思いました。表題作は『都内版』と同様のいわゆる「ブンヤもの」です。ただしこのジャンルを確立した、連作短編集になっています。

 結論からいえば、「ブンヤもの」というジャンルは登場した最初から確立されてしまっていると言っていい。もう、まるで長年書いてきたジャンルであるかのように、読者の興味をひきつけます。人情もの丸出しではありますが、私は人情ものだから嫌いという人間ではないので、別に不満はありません。犯人が明かされるときに手がかりがフェアに提示されることもありませんが、そもそも犯人あてではないので構いません。完全にスリラーです。

 島田一男の著作を読んでいると、書き流したと思しい少々荒っぽい点はありますが、しかし、昨今の作家が馬鹿丁寧に書いた大長編と違うところは、どういうわけか安心して読める、ということです。これは何に起因するのかまだはっきりわかりませんが、たぶん文章が安定しているからでしょう。リズムがいいんでしょうね。どんどん読めます。最近はそのあたりに関心を持っているのでとりわけ勉強させられました。新聞記者たちが確かに生き生きと動いている感じが伝わってきます。これは実体験だけではどうにもならないことだと思うのです。

 実は一つ不思議なことがありまして、解説を見ていると「表題にもなっている『社会部記者』は何年に島田がどこどこに載せた作品で・・・」と書いてあるのですが、目次を見ると、「社会部記者」という作品はありません。協会賞も「社会部記者」を中心とした連作に与えたということになっているので、なぜないのかわかりませんでした。どうやら内容から判断すると、冒頭の短編「午前零時の出獄」というのが「社会部記者」のことらしいのですが、何で題名が違うのかわかりません。不思議な編集です。

 そうそう、細かいことを言うと、この「午前零時の出獄」が相対的には一番駄目でした。とは言っても水準を満たしていると思います。「風船魔」などは乱歩的なテイストを取り入れて、しかもちゃんとした「ブンヤもの」になっています。
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コメント 1

天下布武


「もう、まるで長年書いてきたジャンルであるかのように、読者の興味をひきつけます」

想像とあっています。一冊も読んでいないんですけど、
新聞記者もの、という原点、後世のさまざまなドキュメント物
の企画や、事件物での登場人物の動かし方など、島田一男が
その確立に何役も買っているイメージがありました。


どういうわけか安心して読める、って、ありますよね。
今日は、車でなくて、確実に電車で行きたい!っていう
気分を代弁するような感じ。
絶対、ヘンな感性の世界に連れて行ったりしないけど、
起承があって、転結がバシッと落ちてちゃんと、まいどあり!
の読後感を与えてくれそうです。

わたし、体験していないことを書く、って、作家はもちろん
すべてを体験できるわけではないのであたりまえなんですが、
想像力、創造力?の凄さにびびることがあります。
作家は「作家」だけあって、びびっちゃいられないのは
わかりますが、いや、凄い。

「風船魔」 乱歩テイストですね、まさに。
ブンヤものって、探偵ものにも置き換えられる立場を
含んでいますね。

いやでも、読んでますね、古今東西。凄い。
by 天下布武 (2008-06-17 17:32) 

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