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『零式戦闘機』 吉村昭

吉村昭の『零式戦闘機』を読みました。
JDCの合宿企画「オススメ本紹介」でもとりあげられていた小説ですね。

本書の「主人公」は、零式艦上戦闘機。第二次世界大戦で活躍した戦闘機を代表する、あの名機“ゼロ戦”です。
そのゼロ戦の開発から採用、活躍、そして連合国の新鋭機を相手に劣勢に回り、やがて終戦を迎えるまでが描かれています。
機体が軽く、翼が大きいゼロ戦や、陸軍の「隼」は、米英の戦闘に比べ旋回性能に優れ、1対1の格闘戦(ドッグファイト)に持ち込めば、きわめて有利に空中戦を戦うことができました。

この小説のよい点は、単にゼロ戦の軍事的な行動だけを追ってはいないことです。
航空機メーカー、開発チーム、工場から飛行場までの機体運搬問題、戦時中の部品確保問題、などなど航空機産業全体を描き、その象徴としてゼロ戦を位置づけています。
ゼロ戦を開発したチームのリーダーである堀越二郎氏はあまりに有名な人物ですが、彼がどんなに素晴らしい機体を設計しても、日本の産業界が彼の設計に応えられる部品を提供できなければ、それは絵に描いた餅になってしまいます。

戦前、日本は航空機の発動機(エンジン)の分野で米英に遅れをとっていました。
大戦後半、稼働率の良い2,000馬力級の発動機をついに開発できなかった日本は、ゼロ戦で埋めた世界との差をまた広げられてしまいました。
陸軍の「疾風」、海軍の「紫電改」に搭載していた2,000馬力級「誉」は、小型にまとまった優れた設計ながら、日本の工業製品らしく、あまりに複雑でまさに「工芸品」でした。量産にかけた場合、一定の品質を保つのが難しく、またメンテナンスにも苦労する代物で、「疾風」や「紫電改」の機体性能を十分に引き出すことができませんでした。

小説にも、堀越氏が日本の非力な発動機でいかに高性能な戦闘機を開発するか頭を悩ますシーンが多くみうけられます。戦前の軍用機開発の本質をついたシーンですね。

さて、この小説を読んで驚いたことがありました。
ゼロ戦を生産していた愛知県の三菱工場では、機体をいくつかの部分にバラし、牛車に積んで遠くの飛行場まで運搬していたそうですが、その牛が不足してきたので、北海道などから馬を調達することになりました。
当時は国家総動員法下で、物品の価格はきびしく統制されていたのですが、三菱はぜひとも良い馬を買いそろえたいために、統制価格以上の値段で馬を調達していました。
これが法律違反にあたり、関係者には裁判の上、実刑判決が下されました。

戦時中というと、軍事最優先であり、こんな事件があっても戦闘機の生産に係わることですから、「非常時であるから、おとがめなし」になるのかと思っていましたが、さにあらず。さすがは法治国家日本です。


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コメント 1

天下布武

泣けます、戦時日本。
一生懸命ですよね。
わたしも、いま自分が持ってるもので、
生活を高めよう、とか思っちゃいました。

いまある、能力を最高に出すために四苦八苦したい。

でも、戦争も設備が、航空機、空母、とどんどん
インフレしていきますよね。インフレ勝ち。
最後に、スペースコロニーを作れて、移住して脱出
できれば、それはどんな戦争でも勝ち逃げができる。

ところがいま、アメリカは、一番ちっちゃい軍備、
鉄砲、の問題で頭を抱えちゃってる。
因果応報と言えましょう。

山本五十六さんも、半年は戦えますが、
それ以降は、ちゃっちゃくちゃらに、もう、
遊びみたいなものです、自爆ですよ、と
もっとはっきり全員に言ってくれれば、いらぬ
兵器の開発で日本は苦しまずにすみましたのに・・

でも、本当ですね、おとがめなし、になりそうですよね。
実刑をくらった人、目を白黒ですよね。
ムショの風呂につかりながら、「洒落になんないよ~」
という感じ。

秀吉時代はよかったですね。
三木城の兵糧攻めでは、若狭、丹後、但馬の
米を高値で買占め~!!

敵将の吉川の「え?米、売っちゃったの・・」
という絶句が聞こえます。
「もののふ道違反じゃ!」
by 天下布武 (2007-04-25 01:02) 

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