So-net無料ブログ作成
検索選択
前の3件 | -

『黒い白鳥』 鮎川哲也 [鮎川哲也]

読書帳を見たら、なんと5度目の再読でした。

黒い白鳥 (創元推理文庫)

黒い白鳥 (創元推理文庫)

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2002/03
  • メディア: 文庫


代表長編を多いと4、5回も再読する作家が、私には3人います。
横溝正史、高木彬光、鮎川哲也です。
「横溝・高木・鮎川スクール」という言葉があったそうですが、まぎれもなく戦後本格を代表する3人であり、中学高校時代の少年・編集責任者を育ててくれたのは、まさにこの3人の巨匠でした。

5回目になりますが、(再読としては)今回がもっとも楽しめたかもしれません。
事件を多視点で浮かび上がらせていき、刑事たちは地に足の着いた堅実な捜査を続けます。
現代本格と比べると、スピード感はありませんが、炙り出しのように徐々に事件の輪郭が明確になっていく様子はたいへん面白い。
リアリズム捜査小説かと思いきや、その中にしっかり手がかりを蒔いている。
これがまぎれもない本格ミステリーであることが分かります。

第一の殺人(陸橋から死体を列車の屋根に投げ降ろす)で、被害者の替え玉が中華蕎麦を食べているのを偶然目撃される、というエピソードをすっかり忘れていました。この出来事の読者への見せ方が上手い。
こういう細かいところまで、よく作り込まれた傑作です。

初めて読んだのは、角川文庫版。
この版に掲載された時刻表は、巻末にまとめられていました。
(普通は、関係する場面のところに必要なページだけ差し込む)
ちょうどミニ時刻表のような感じで、3、4ページにわたって時刻表が続いていたのです。
犯人がアリバイを説明するシーンでは、こちらも時刻表を開くがごとく、巻末のページをめくったことを思い出します。
時刻表が何度も駆使されている、時刻表ミステリーの王、『黒い白鳥』だからこそ味わえる醍醐味でした。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『片桐大三郎とXYZの悲劇』 倉知 淳

2016年版「本格ミステリベスト10」の2位。

片桐大三郎とXYZの悲劇

片桐大三郎とXYZの悲劇

  • 作者: 倉知 淳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/09/24
  • メディア: 単行本


私が倉知淳の作品を読むのは、『星降り山荘の殺人』以来の2作目。
文体があまり好きになれず、積極的には手を出していません。
『片桐大三郎とXYZの悲劇』も、味覚が合わないのを我慢して咀嚼した感じ。
そこまでして、なぜ読んだのかというと、エラリー・クイーンの悲劇四部作を下敷きにしているからであります。あの食材をどんなふうに調理したのか確かめたくて。

長めの短編というか、やや短い中編四つから構成されています。
それぞれが、クイーンの『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『最後の事件』と対になっています。
本歌取りになっているのはシチュエーションくらい。
(たとえば、第一中編は、満員の路面電車ならぬ、朝の山手線車両内で毒殺が起きますが、本家に似ているのはその程度で、その先はまったくのオリジナル)

ドルリー・レーンに相当するのは、やはり聴覚に障害を持つ元俳優・片桐大三郎。
このキャラクターがあまり良くない。
濃いキャラが、なにか上滑りしているかんじ。
小説の途中、片桐大三郎の一代記のようなものが何度か挿入されますが、筋には影響なく、まったく不要。リズムを崩すだけ。

『最後の事件』と対になっている第四中編では、ワトソン役の若い女性が名探偵になりかわって推理を試みる、という設定を借用。
面白いと思ったのは、本家クイーンの『最後の事件』における、前作『Z~』からの叙述上の変更点(スミマセン、ネタバレを避けるために曖昧に書きますが、既読の方ならすぐに分かると思います)をまんまと利用して読者をミスリードしているところ。
これは上手い。私もすっかりだまされました。

いいアイデアなのですが、せっかくの事件がしょぼくてアイデアを生かし切れていません。

アイデアを生かし切れていないのは、ある意味、本家『最後の事件』もそうなのですが、まさか、そこまで本家と同じにしなくてもいいのに。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『黄色い風土』 松本清張 [松本清張]

私選・松本清張長編ベスト5に入る隠れた傑作です。

黄色い風土 (講談社文庫)

黄色い風土 (講談社文庫)

  • 作者: 松本 清張
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1973/01/27
  • メディア: 文庫


ちなみに、ベスト5は、
1 点と線
2 ゼロの焦点
3 Dの複合
4 火の路
5 黄色い風土
です。

『黄色い風土』は新聞連載小説。1959~60年に連載され、翌61年に刊行。連載時は『黒い風土』という題名で、お得意の「黒い~」を冠した作品でしたが、単行本刊行時には、なぜか『黄色い風土』に改題されています。
黒→黄色の変更理由は、小説を読む限りではまったく分かりません。

1960年前後は、清張の小説執筆最盛期で、いくつもの長編が量産されました。
この『黄色い風土』は、それらの中でも娯楽性の高い内容で、読者を飽きさせません。たいへん長い小説ですが、リーダビリティーが高くダレることはありません。

主人公は、若宮四郎という若い週刊誌編集者。
熱海への出張途中、東京駅で見た新婚夫婦のダンナの方が、新婚旅行先の熱海温泉で謎の死を遂げる。警察は自殺と断定するが、不自然さを感じた若宮が新婚夫婦のことを調べはじめると、次第に謎が深まり、追っていた関係者も死を遂げる。やがて連続殺人事件へと発展していく……。

少しずつ、犯罪の輪郭が浮かび上がってきて、やがて旧日本軍の残党が関係する悪事が見えてくる、というスケールの大きさも良い。ラストは、清張らしからぬアクションシーンもあって驚きます。

清張の悪癖「偶然の安易な利用」は序盤のひとつを除いては気にならない程度。その偶然は、東京がまるで人口五千人の小さな村と思ってしまう! 清張作品を数多く読破している私は、もう麻痺していて興ざめすることなく読めるのであります。

水準以上の作品だと思いますが、なぜか知名度がありません。映像化も映画とドラマでそれぞれ一度ずつだけ。
映画は、連載直後の1961年に公開。鶴田浩二、丹波哲郎、佐久間良子の豪華キャスト。
ぜひ見てみたい。
ただ、内容はかなり簡略化されているとのこと。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
前の3件 | -